あらすじ
向けられた嘘が、声の濁りでわかる。
そんな力を持って生まれた令嬢アリシアは、婚約者の浮気を声だけで見抜き――「気味の悪い女だ」と、化け物呼ばわりされて捨てられた。
世辞も慰めも、向けられるそばから濁っていく。澄んで聞こえるのは、刃のような本音ばかり。真実だけが視える世界は、ちっとも優しくなかった。
そんな彼女を「嘘発見器として使わせろ」と召し上げたのは、酷薄と噂される王太子セヴラン。
利用されるだけの関係。そう割り切ったはずだった。
――なのに、この男だけは。どんなに疑っても、一度も声が濁らない。それでいて、何を考えているのか、まるで視えない。
嘘がわからないのではない。嘘を、つかないのだ。
「殿下。なぜ、わたくしにだけ、本当のことしか仰らないのですか」
能力の効かない、ただ一人の男。やがて彼の暗殺を狙う陰謀が動き出し、その糸の先には、かつて自分を捨てたあの男がいて――。
嘘を見抜く令嬢と、嘘をつかないと決めた王太子の、不器用な恋物語。
※一話完結の短編です。