あらすじ

「ねえ、遼太郎くん。またそれ、読んでるの?」 私の問いかけに、目の前に座る小泉遼太郎は、わずかに視線を動かしただけで、すぐ手元の分厚い専門書へと視線を戻した。 彼の細い指先が、流麗な筆致で難解な数式をノートに書き連ねていく。 「ああ、木下。今、非線形力学の収束性について考えている。邪魔をするな。思考のベクトルが霧散する」 遼太郎はそう言って、めがねのブリッジをくいと押し上げた。相変わらずの塩対応。 三度の飯より数式が好き、という噂は本当らしい。 けれど、私が彼に恋をしてから半年。その冷たい反応も、今では一種の心地よささえ感じるようになっていた。 私、木下莉子。大学2年生。 これまでの人生、恋愛とは縁遠いところで生きてきた。 でも、この大学に入って初めて、自分の意志で誰かを追いかけるという経験をした。 遼太郎は、ただの「変わり者」じゃない。 自分の世界を誰よりも深く愛し、そこに一切の妥協を許さない、真っ直ぐな人なのだ。 第一話より本文引用

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カクヨム2026/06/21
  • 現在の作品理数系好きピと付き合いたい!