あらすじ
「質の悪いポーションで、人は死ぬ。」
一流冒険者ギルドで工房長を務める天才錬金術師ウィルは、品質を守るためなら利益も生産数も妥協しない男だった。
しかし、「数字こそ正義」を掲げる上層部と対立し、「利益を生まない」という理由だけで追放されてしまう。
行き場を失った彼を拾ったのは、廃業寸前の小さな冒険者ギルド。
古びた工房、足りない道具、冒険者は新人ばかり。
誰が見ても未来はない。
それでもギルドマスターの少女は言った。
「みんなに『おかえり』って言える場所を守りたいんです」
その言葉に、ウィルは決意する。
白線を引き、手順書を書き、工程を改善し、人を育てる。
品質管理という異世界には存在しない概念で、誰でも最高品質のポーションを安定して作れる工房を築き始めた。
やがて評判は王都中へ広がっていく。
「あのギルドは新人でも生きて帰ってくる」
「あそこは生還率が異常に高い」
「最高品質のポーションが一番安定して手に入る」
一方、ウィルを追放した一流ギルドは、目先の利益だけを追い続けた代償として、品質低下、事故増加、離職者続出という静かな崩壊を迎えていた。
これは、最強を目指す物語ではない。
一本のポーションと、一つの仕組みで冒険者の命を守り、誰も死なない冒険者ギルドを作ろうとする、一人の錬金術師の物語。