あらすじ
「藤吉よ、まこと我の傍におってくれたのは、そちだけであったか」
元亀元年、金ヶ崎。
浅井長政の裏切りにより、織田軍は退路を断たれた。
誰もが死を覚悟する絶望の中、信長の身代わりとして殿(しんがり)を申し出たのは、家中で異質な存在として見られていた男、木下藤吉郎だった。
なぜ、誰より生きることに貪欲な男が、生還の見込みなき死地に残ったのか。
なぜ、身内に裏切られ続けた織田信長は、この男だけを最後まで信じたのか。
戦国の世が求めたものは、血筋か。
実力か。
それとも──。
尾張中村に生まれた少年・日吉丸。
欲しかったものは、地位でも名誉でも天下でもなかった。
ただ、自分が帰る場所が欲しかった。
やがて木下藤吉郎、羽柴秀吉となる男が、信長と出会い、仲間と出会い、守りたいもののために乱世を駆け抜ける。
これは天下を欲した男の物語ではない。
天下を背負うことになった男の物語である。
後に天下人が遺した辞世の句。
「なにわのことも、ゆめのまた夢」
その夢の始まりを描く、もう一つの戦国譚。