あらすじ
世界を救いたい。でも、僕の世界にはしない。
雨の日だけ、セイは少しだけ外へ出られた。
学校に通えなくなり、本の中の世界だけを居場所にしていた少年は、ある日、住宅街の片隅で不思議な仔猫と一冊の魔本を拾う。
紅と金の瞳を持つ仔猫。
読めない文字で埋め尽くされた分厚い本。
そして、セイが呟いた小さな願い。
「誰も知らない世界を冒険してみたい」
次の瞬間、セイは青空の下、見知らぬ草原に立っていた。
そこは花人、セイレーン、天人、魔導書、神々が存在する異世界《ノース》。仔猫は猫耳の少女ファティマとなり、セイを「ご主人様」と呼んで旅へ誘う。
花の都ハナン。
空中都市ゼフィ=ラウ。
砂漠に眠る黄金都市。
失われた名を抱く魔導書。
そして、世界を何度も作り直してきた〈大きな神〉。
最初は逃げ場所として異世界を望んだセイだったが、旅の中で知っていく。
この世界は、自分のために用意された夢ではない。
ここに生きる人々にとって、たったひとつの現実なのだと。
やがてセイは、世界を書き換える力を持つ〈創造の書〉へ辿り着く。
死者を戻すことも、悲劇を消すことも、ファティマを完全な存在にすることもできるかもしれない。
それでも、セイは選ばなければならない。
世界を愛することと、世界を所有することは違う。
これは、本を読んでいた少年が、傷ついた世界を記録する者になるまでの物語。