あらすじ
「私を壊した大人たちへ。この帽子で、心を射抜いてあげる。」
「ミサさんは本当にセンスがいいね」
そう褒められるたび、私はなんか笑ってごまかす。母の望む「世界的なデザイナー」の夢、私の心にこびりついた母の夢をかわりに叶えるという、人生乗っ取られ感。
誰も知らない。私の服は、母の死と、居なくなった父と、彼氏の歪んだ支配をステッチの間に隠すことでようやく形を気作っていた。
講評で「中身が空っぽ」18ですべてわかったような大人なふりをするなと公衆の面前で断罪され笑われた、信じていた彼氏にまで。
信じたかった愛、全てが崩れたあの日。
私は日本ごと過去に捨てた。
パリ、ロンドン、フィレンツェ、ベルリン。
世界を渡り歩き、多様な人々に揉まれながら、私はようやく気づく。
愛なんて、よく分からない。でも、自分の傷を隠さず、弱さも認められたら、服やデザインは初めて生き生きと自発呼吸をはじめた。
お腹がいっぱいの時は何食べても不味い。
生意気で大口を叩くスタイルは日本では生意気だと叩かれる。
でも海外は自己主張するやつしか生き残れないから私には自分らしく生きられて居心地が良い。
不完全でも、矛盾や天然やまちがいも、自分自身をようやく認められるようになったとき、デザインは世界を変える力を持つ。
愛はまだ分からないまま。
美大を主席で卒業、日本では何者にもなれなかった。
母の呪いのネガティブな言葉日本の抑圧的なアカデミズム。息苦しい圧、窒息寸前だった私を救ったのは、パリの乾燥した静けさと風と、針だった。
言葉も予約も持たず、パリの芸術家たちが住むアパートに突撃し、即日アーティストVISAを獲得。
黒髪のエキゾチックでスタイリッシュでコケティッシュなkawaii(日本)をあらわすルックスと、既存の美学を解体するような前衛的な服作りは、たちまち現地のクリエイターたちの熱い視線を集める。
ロンドンでの快進撃、イタリアで学んだ一生モノのクラフトマンシップ、そしてベルリンで出会った多国籍な仲間たち。
さらに、講義中に18歳の学生から猛烈なアタックを受け……?
「いい子、従順で貞節?な日本風の古風な女性像の押し付け」を捨てて手に入れた、世界で一番自由で、自分だけの居場所。
これは、どん底から這い上がり、世界を縫い合わせた一人の女。
愛はまだ探し中、仕事は順調なデザイナーの軌跡