あらすじ
黒猫族の次男・シンは、生まれながらの「不幸体質」持ちだ。
躓く、こぼす、壊す——日常のあらゆる場面で不運が降りかかり、「不吉だ」「疫病神だ」と疎まれ続けてきた。ついに幼馴染の婚約者にまで「側にいるのが怖い」と婚約破棄を告げられ、傷心のシンは深夜の石橋でひとり泣いていた。
そこへ現れたのは、狼族の王・ガルディアスだった。
「お前の涙、もらっていいか。触れた瞬間、長年の痛みが消えた」
問答無用で王宮へ連れ帰られたシンだったが、不幸体質は王宮でも絶好調。ソファの脚を折り、カーテンに絡まり、厨房を爆発させ、外交中の謁見の間に迷い込む——それでもガルは笑い飛ばし、堅物の侍従長は毎日様子を見に来て、無愛想な騎士団長は転ぶ前に手を出してくれた。
「不幸で迷惑ばかりの僕でいいんですか」 「俺にとっては世界一価値がある」
やがてシンは知る。自分の涙には、愛に飢え続けた末に宿った「癒しと守護の加護」があることを。そして——愛されるほどに、その力は大きくなっていくことを。
「お前がずっと泣いていたのは、ずっと愛に飢えていたからだよ」
政敵の魔の手が王宮に迫り、ガルが戦場へ向かった夜。シンは考えるより先に、前線へ飛び込んでいた。
「怒っているが——ありがとう」
不幸体質は、きっと一生治らない。
それでも——ここにいたい。
「ガルさんの番に、なります」
不幸な黒猫が、笑える場所を見つけるまでの——賑やかで甘くて少し泣ける溺愛ラブファンタジー。