あらすじ
三百年。
嶺井灯花は、それほど長い時間を生きてきた。
人を愛した記憶はある。 愛された記憶もある。
だが、その相手の顔も、名前も、もう思い出せない。
長すぎる時の中で、灯花は多くを失った。
喜びも、悲しみも、怒りも。
ただ退屈な日々だけが続いていた。
そんなある日。
一人の青年と出会う。
誰かのために手を差し伸べることを当たり前のように行い、傷つきながらも他人を思いやる不器用な青年。
理解できない。 だから腹が立つ。
それなのに、なぜか目が離せなかった。
忘れていた感情。 忘れていた記憶。 そして、忘れていた春。
三百年の孤独を生きた存在と、一人の青年が出会うとき。
止まっていた時間が、静かに動き始める。
これは、失われた心を取り戻していく物語。