あらすじ
※本作には、交通事故後の後遺症、入院生活、手術、心身の不調に関する描写が含まれます。
※だいたい、ふたりの少女が病室から抜け出そうと悪だくみしている話です。
交通事故で入院した女子高生の榎木弦青は、すべてに絶望していた。
身体は思うように動かず、大きな手術を受けても元通りになる保証はないと医師に言われた。外に出る夢も、未来への希望もない。彼女に残っていたのは、知識だけだった。
ただ、彼女が知っているのは、テセウスの舟や胡蝶の夢のような、答えのない問いばかり。
病室で世界を諦める弦青の話し相手は、隣のカーテン越しに話しかけてくる少女。Bベッドだからビビ、と名乗る彼女は、妙に軽く、妙に今っぽく、弦青の絶望をいつも半音だけズラしてくる。
壊れた身体で生き残っても、自分は自分なのか。
知識だけで、世界を生きたことになるのか。
元に戻れない人生に、それでも明日を欲しがっていいのか。
カーテン越しに続く会話の果てに、ふたりは約束する。
――この病室から抜け出して、一緒に海を見に行こう。