あらすじ
父子家庭で育った高校生の朝倉懐は、小学生の頃から台所に立ってきた。 出汁を取って、季節の食材を選んで、父親のためにご飯を作る。 それだけが、ちゃんと地面の上にいる感じがするから。
スーパーで出会った同じクラスの月城六美は、片親で、お父さんのために豆腐ともやしを買いにきていた。 豆腐と、もやし。 それだけのかごを見て、懐は少し、気になった。
料理を教えることから始まった。 弁当を交換して、塩が多いと言って、塩が多いじゃないと言い返されて。 迷子の子どもをあやす六美の顔を見て、懐は一歩、止まった。
転勤で離れても、電話は続いた。 料理の話をして、しんどい夜に話して、季節が変わるたびに同じものを作った。
恋愛じゃなくて、居場所の物語。 ただいまって言える場所が、増えていく話。
コメディなのに、刺さる静けさがある。 料理が愛情で、台所の匂いが記憶で、名前を呼ぶだけで距離が変わる。
そういう物語です。