あらすじ
公認心理師、臨床心理士として働く佐々木諒真は、たった一人の家族である母親を亡くしたばかり。残されたのは借金と、バイト三昧で妙に臨床経験が豊富になったアラサー心理士の自分、そしてパスワードのわからない母親のスマホだった。
金欠の中、借金返済に向けて真面目に働くも、「今はじっくり話を聞く時代じゃない」と勤務先の病院長に存在意義を否定され、ボーナスカットを言い渡される。
身も心もボロボロになり、彼が導かれるように向かった先は、地元でも有名な「如月神社」だった。ここで彼は偶然にも、如月樹という美貌と怪しさを兼ね備えた男にスカウトされ、心理士として雇われることになった。
が、案内された先は、誰もいない椅子の前。
「さあ、先生。こちらの霊のカウンセリングをお願いします」
果たして本当にそこに霊はいるのか。
それとも彼の狂気の舞台でおどらされているだけなのか。
霊が見えない心理士が、何一つ信じられるものがない中でとった行動。
それは、そこに自分の椅子を置くことだった。
これは、霊が見えないが心は扱えるアラサー心理士と、霊は見えるが心は扱えない美形霊能者の、ギリギリ了解可能な日常譚である。