あらすじ
大正の帝都。
文明開化の光が街を照らす一方で、妖の血を濃く継ぐ者たち――先祖返りは、華族、財閥、寺社、警察、新聞社の裏で権力を握っていた。
先祖返り会で最も権力を持つのは、酒呑童子の先祖返りを率いる篝火家。
百鬼、いや千鬼を従わせるほどの力を持つ百鬼夜行の頭が、裏社会の頂点に君臨している。
次席に座るのは、本来なら山本五郎左衛門の先祖返りが生まれるべき家紋を持つ名家、鵺喰家。
三番目に、玉藻前の先祖返りを継ぐ蘆野火家が続く。
鵺喰家に生まれた十九歳の娘、鵺喰深雪乃は、妾腹でありながら妖の特徴を持たない「人間臭い娘」として虐げられてきた。
親族だけではない。
使用人たちからも水を浴びせられ、食事を抜かれ、蔵や物置に閉じ込められ、母の遺品を隠され、「死なないなら平気でしょう」と笑われてきた。
深雪乃は、傷つけられても死なない。
だが痛みは消えない。
その身体の理由を、彼女自身も知らない。
父の死をきっかけに相続争いが起き、深雪乃は屋敷を追い出される。
雨の帝都で妖に襲われた彼女を拾ったのは、酒呑童子の先祖返りにして百鬼夜行の頭、篝火赫臣。
金髪、蒼い瞳、耳に二十を超えるピアス、舌ピアス、無数の装身具。
煙管をふかし、和服の片袖を抜いた危険な色男。
一見チャラく、誰にでも軽く笑うように見えるが、深雪乃を見た瞬間に一目惚れする。
赫臣は序盤から深雪乃を強く愛する。
抱き上げる。
手を繋ぐ。
髪を撫でる。
深く長いキスをする。
何度も「可愛い」「大好きだ」「愛してる」「お前しかいない」と囁く。
深雪乃は毒舌で返す。
けれど拒まない。
そんな二人が鵺喰家へ戻った時、屋敷では相続を巡る連続殺人が始まる。
密室。
母の遺品。
偽装された妖気。
先祖返りの血筋。
そして、深雪乃の不死身に隠された秘密。
愛と疑惑が絡み合う大正あやかし恋愛ミステリー。