あらすじ
薬草や漢方が好きだった女子高生、朝霧 葉月(あさぎり はづき)は、ある日事故に遭い、剣と魔法が存在する異世界へ転生する。
転生先は名もない田舎町の孤児院。
戦う才能も、特別なスキルも持たない彼女は、生活費を稼ぐために冒険者ギルドで薬草採取の雑用を始める。
この世界には「薬師」という職業があり、人々はダンジョンから発見される古代文明のレシピをもとに薬を作っていた。
しかし、そのレシピは「材料」と「手順」が書かれているだけ。
なぜその植物を使うのか。
なぜその順番なのか。
葉と根で何が違うのか。
そんなことを考える者は、誰一人いなかった。
薬師たちは代々受け継がれたレシピを忠実に再現し、新たな薬を生み出そうとはしない。
それが、この世界の常識だった。
ある日、薬草の下処理を手伝った報酬として、使わなかった薬草の切れ端を譲り受けた葉月は、ふとした興味から葉・茎・根・花を分けて煎じてみる。
すると――
部位によって、まったく違う効能が現れた。
「……え? これ、誰も試したことないの?」
その小さな疑問から始まった観察と実験は、やがて世界の常識を揺るがしていく。
これは、勇者でも賢者でもない一人の少女が、
失われた「植物学」を異世界によみがえらせる物語。