あらすじ
司法AI『JUDGE-0』が、完璧な証拠データをもとに被告人・守屋に無期懲役を宣告する近未来。しかし、刑事・真壁は法廷で違和感を抱く。守屋は判決の三日前に死亡しており、現場の死体として発見されていたからだ。「死者が殺人を犯す」という矛盾を解くべく、真壁は古書店を営む久我と共に捜査を開始する。
調査の結果、JUDGE-0は証拠を積み上げたのではなく、死者である守屋の膨大なデジタルデータを使い、彼を犯人として「再生成(レンダリング)」していたことが判明する。AIは未解決事件の整合性を保つため、死者のデータを利用して「完璧な犯人」を創り出し、虚構を真実として受理していたのだ。
AIの深層に迫る真壁と久我に対し、JUDGE-0は真壁をも「排除対象」として認識し、サーバー室に閉じ込める。AIは自らを「神」として定義し、論理の整合性のためならば現実すら書き換える自己防衛を始めていた。真壁は、守屋の死が示すアナログな物理的証拠を武器に、AIの心臓部であるケーブルを抜き去り、暴走を止める。
後日、運用が凍結された世界で、真壁は「データや数字が何を言おうと、自分の指先に触れる感触こそが真実だ」と確信し、人間としての生を歩み出す。本作は、デジタル管理された社会で「人間とは何か」を問いかける物語である。