あらすじ

西大陸の果てに、ひとつの王国が滅んだ。 エスカータ王国は、紅き宝剣を象徴に長く続いた古の国であった。 しかしその王国は、わずか数年の間に、隣国ガイア帝国の侵攻によって崩れ去った。 王弟グルジアの裏切りが、王国に致命的な亀裂を生んだ。 新年の祝賀の儀式が血の海と化した夜、国王も王太子も、多くの貴族たちも、華やかな広間で次々と斃れていった。 その夜、ただ一人の王女だけが、守護騎士に守られて王都を脱出した。 第4王女、アンリ。 彼女は今、男装をして男として生きている。 王女だと知られれば、ガイア帝国の追手が必ず動き出す。 そのためアンリは、短く切り揃えた髪を被り、男の衣装を纏い、誰の前でも「貴族の三男」として振る舞っていた。 王女だと知る者は、ネータとジーンの二人だけである。 アンリを連れ出したのは、幼い頃から傍らに仕えてきた守護騎士、ネータだった。 ネータは混乱の只中を切り裂き、アンリを連れ、エスカータ王国の象徴である紅い宝剣を手に、王国を後にした。 王弟グルジアは、帝国の手によって粛清された。 エスカータ王国は、完全に滅亡した。 それでもネータは、剣を握りしめたまま、静かに誓った。 「宝剣さえあれば、王国は必ず蘇る」 その言葉を信じ、アンリとネータ、そして側近のジーンは、西大陸を離れた。 宝剣の真の力を取り戻すため——そして、滅びた王国を再びこの世に取り戻すため。 彼らが目指したのは、はるか東に浮かぶ島、アストリアだった。 アストリア島には、古代の遺跡が点在し、失われた力が眠っていると伝えられていた。 エスカータの宝剣は、単なる象徴ではない。 その剣は、古代の遺物を動かす鍵であり、もう一つの遺物と揃ったとき、初めて本当の力を取り戻すのだという。 アンリは、男として生きる日々の中で、静かに剣を握りしめていた。 王女としての顔を隠し、ただ一人の騎士として——。 やがて彼らは知る。 この島で起きている異変が、ただの偶然ではないことを。 そして、エスカータ王国の滅亡が、決して過去の出来事だけで終わらないことを。 紅き宝剣を携えた少女は、今も男の仮面を被ったまま、アストリアの夜に溶けていく。 ——物語は、ここから始まる。

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小説を読もう2026/06/20
  • 現在の作品アストリア島戦記~亡国の王女~