あらすじ
真壁詩織、二十六歳。
人付き合いが苦手な彼女は、大学時代から親友・橘美央の小説を代筆していた。
華やかな容姿と社交性を武器に、「令和の新鋭作家」として文学界の寵児となった美央。地味で無口な詩織は、その陰で物語を書き続けている。受賞作『夜を泳ぐ魚』も、本当の作者は詩織だった。
授賞式の壇上で、美央は涙ながらに言う。
「私の親友、真壁詩織に感謝します」
その言葉を、詩織は信じていた。
けれど共同生活の中で、美央は締切のたびに原稿を丸投げし、詩織の才能に依存していく。
「私にはあなたしかいない」
泣きながらそう縋る美央を、詩織は見捨てられない。
これは友情なのか。
それとも、誰かの人生を生きることに慣れてしまっただけなのか。
やがて詩織は知る。
自分が書いた言葉だけではなく、自分の人生そのものが奪われていたことを――。
才能を搾取された女と、才能なしでは生きられない女。
依存と愛情が絡み合う歪な関係の果てに、詩織は自分の名前を取り戻せるのか。
これは、奪われた人生を取り戻す、静かで激しい復讐と再生の物語。