あらすじ
トラックに轢かれて死んだはずの柊蒼介(22歳)が目を覚ましたのは、見渡す限りの黄金色の麦畑だった。
そこで出会ったのは、朽ちた郵便局に佇む白髪紅眼の少女・リネット。彼女は蒼介に古びた革鞄を押しつけ、淡々と告げる。
「届かなかった手紙が、この世界を蝕んでいる」
鞄の中には数百通——いや、底の見えないほどの手紙が詰まっていた。宛先は『魔王』『滅びた王国の国民』『故人』……届けようのない相手ばかり。
しかも、手紙を届けるたびに記憶を一つ失う。届けなければ、世界が一つ消える。
理不尽な規定。それでも蒼介は鞄を肩にかけた。
届けるのは手紙じゃない。誰かが誰かを想った——その瞬間だ。
案内役は消印模様の目を持つ謎の鳩・ピジョン。悲しい手紙は塩辛く、嬉しい手紙は甘いらしい。
死んでから始まった郵便配達。失っていく記憶。それでも届けたい想いがある。
琥珀色の空の下、途方もない配達が始まる——。