あらすじ

深く考えないことで成立している人格というものがある。橘ゆうとはそういう十八歳だった。進路も、バイトも、恋人への嘘も、すべて「断る理由が思いつかなかった」か「どうにかなるかな」で通り過ぎてきた。 ある夏の深夜、ゆうとは練馬区の住宅に入り、居合わせた老人に暴力を振るった。翌日、二十万円を受け取った。翌々日、恋人にネックレスを買った。恋人はSNSに写真を上げた。いいねが七十四件ついた。 老人は死んだ。 ゆうとはそのことを、ニュースで知った。ショックではなかった。他人事だった。ただ、ある夜、タイムラインに彩花の投稿と遺族のアカウントが並んだとき、頭の中に初めて文章が成立した。「あの金で、買った」。罪悪感ではなかった。怖くもなかった。ただ、「そういうことか」だった。 感情は来なかった。来なかったことが、来ることよりもずっと深く、静かに、ゆうとを崩していった。 既読がつく。返信は来ない。捜査が進む。遺族がSNSに書き続ける。日常が続く。そして十二月のある朝、学校の廊下で、ゆうとは立ち止まった。 あの日と同じで、止まる理由は思いつかなかった。 この作品はフィクションです。 本当にフィクションです。 実在の人物等とは一切関係ありません。

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小説を読もう2026/06/19
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