あらすじ
小説投稿サイトには、一つの残酷な真理がある。──『初速が9割』。
高校一年生の頃、一度だけ投稿した「第二話」の閲覧数は『0』だった。誰にも読まれず、批判すらされない底なしの静寂に絶望した俺、始月零(しづき れい)は、それ以来、美味しい『第一話(プロローグ)』だけを量産しては放置するエタ常習者となった。
「どうせ俺の続きなんて誰も読まない」
そう開き直り、エゴサもPV確認も完全に放棄して大学一年生になった俺は、ここ数日、奇妙な同じ夢に悩まされていた。
満開の桜の中、トーストをくわえて走るセーラー服の美少女。けれど彼女は、曲がり角の手前で立ち止まり、泣きそうな顔で俺を責めるのだ。
『おねがい、続きを書いて! あなたのせいで、私は先に進めないの』
そんなある日、逃げ込んだ図書館の自習室で、俺は一人の美少女・神代桜(かみしろ さくら)と出会う。
彼女は俺が失踪作家「レイ」であることを見抜くや否や、一冊の古い大学ノートを差し出した。
そこに書かれていたのは、ネットのどこにも存在しない、俺が二年前の冬に書き捨てたはずの手書きの原稿。
タイトルは──『神代桜の、ありふれた日常』。
「ネットじゃありません。学校に行けなかった私を救ってくれたのは、このノートでした」
閲覧数ゼロ、無価値だと思って俺が切り捨てたあの二ページ目の裏で。
世界でたった一人、彼女だけがその言葉を命綱にして、ずっと続きを待ち続けていた。