あらすじ

夕凪の岬で、父の遅れた朝と、澄江や千紘の静かな視線を“見届ける”ところまで辿り着いた相沢湊は、再び春口へ戻る。 今度の季節は、夏の終わりから秋の入口。 昼の光が少しずつ短くなり、港では夜の便の気配が濃くなり始めていた。 篠原のもとに新たに見つかったのは、春口の夜航便に関する古い記録と、港の灯火にまつわる断片的な証言だった。 それによれば、かつて春口には、昼の便ではなく、夜にだけ動く接続の時間があり、そこでは昼間には言えなかったこと、見届けきれなかったこと、出し損ねた言葉が、ひそかに運ばれていたらしい。 さらに、澄江の残したノートの中にも、「夜の海では、見えないものほど灯りで分かる」という一文が見つかる。 湊と汐里は、夜の港、最終列車のあとの駅、そして夜航の灯りを見渡せる岸壁を辿りながら、父や澄江だけでなく、春口という町そのものが、昼には処理しきれない感情や記憶を“夜の便”へ預けてきたのではないかと気づき始める。 そこに浮かび上がるのは、千紘が去ったあとの時間を、父や澄江がそれぞれ夜の海の中でどう抱え続けたのか、というもう一つの側面だった。 『夜航の灯り』は、駅・港・宿・岬を経てなお残る“夜の時間”へ踏み込み、昼には見えなかった心の輪郭を、夜の海に点る灯りの中で描くシリーズ第七作である。 見届けたあとにもなお残るもの、言葉にならず夜へ運ばれるものを静かに照らし出していく。

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小説を読もう2026/06/19
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