あらすじ

「夫の給料で食べてるだけ」 そう笑われた夜、 私は湯気の消えた味噌汁を見つめていた。 朝五時に起きて作ったお弁当も、 特売のチラシを握りしめて走ったスーパーも、 誰かの体調を気遣って選んだ減塩醤油も、 この家では “最初から用意されている空気”みたいに扱われていた。 ありがとう、はなくていい。 でもせめて、 「何もしていない人」みたいに笑わないでほしかった。 私は知っていた。 家計簿の数字は、 嘘をつかないことを。 あなたが終電を逃した夜のタクシー代。 義母の通院に付き添った午後。 誰にも気づかれない小さな節約。 全部、静かに記録していた。 私は、“食べさせてもらっていた”わけじゃない。 この家の毎日を、 壊れないよう支えていた。 そしてもう一つ、 誰にも言わなかった秘密がある。 結婚前、 父に言われた。 「誰かに頼るだけの人生を生きるな」 だから私は、 小さな未来を信じてビットコインを買った。 百万円だったそれは、 いつの間にか、人生を変える額になっていた。 逃げようと思えば、いつでも逃げられた。 それでも残ったのは、 お金より、 “家族になりたかった”から。 家計簿を開いたあなたが、 初めて黙ったあの日。 私は勝ちたかったわけじゃない。 ただ、 見てほしかった。 私の時間を。 私の努力を。 私の人生を。 今、夕食のあと、 あなたは隣で皿を洗っている。 その水音が、 昔より少しだけ優しく聞こえる。 私は今日も、 誰かの給料で生きているんじゃない。 自分の尊厳で、生きている。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/05/28
  • 現在の作品「夫の給料で食べてるだけ」と義姉に笑われた私…家計簿を開いた夫が黙った(実は結婚前のビットコインで億り人でした)