あらすじ
「おばあちゃんって、政略結婚でしょ?」
麗らかな昼下がり。
テーブルにはケーキ。メイドが控える。
「ねえ、幸せだった?」
少しだけ考えて、答える。
「ええ。幸せだったわ」
戦地にいる夫を思い浮かべる。
戦況はよくないらしい。
「いいなあ。私も素敵な人と結婚したいな」
「あら、そうね」
孫が花を手に取る。
「これ、庭師さんが育てたんでしょ?」
「ええ」
扇で口元を隠して笑う。
――昔からの人よ。
手紙が届いた。
『この戦は負ける』
やはり、と思う。
『君は彼と逃げるといい』
少し笑った。
一週間後、庭師が来た。
「旦那様からだ」
差し出されたのは、花束。
「君のために改良した」
甘い香り。
「逃げないだろうから、だってさ」
視界が揺れる。
「……だから、せめて」
言葉は、最後まで聞こえなかった。
◆
首都は陥落した。
高位の貴族たちは拘束されていく。
ある邸宅の一室で、
花に囲まれた男女が見つかったという。
眠るように。