あらすじ
死体は、童歌の順に並べられていた。
だが本当に消されていたのは、死体ではなく、ひとりの名前だった。
――
十七年前、哭島で五人の若者が消えた。
嵐の夜、彼らは海へ向かったとされ、遺体は一つも見つからないまま、事件は海難事故として処理された。
だが島には、古くから奇妙な童歌が残されていた。
ひとつ、嘘つき舌を海へ
ふたつ、聞かぬ耳を灯へ
みっつ、押した手を崖へ
よっつ、見た眼を祠へ
いつつ、祈らぬ心を土へ
十七年後。
哭島を観光資源として再生するため、かつて島へ向かっていた路線を復刻した「哭島列車」が運行される。
招かれたのは、事件の遺族、元新聞記者、元医師、島の関係者、再開発責任者、そして――刑事・真壁彰、警察広報の二階堂壮也、法医学者・九条雅紀。
しかし列車が島へ向かう途中、男が死体となって発見される。
切り取られていたのは、舌。
壁には血文字で、こう書かれていた。
嘘を吐いた舌は海へ
五骸童子
それは、十七年前に終わったはずの事件の再演だった。
舌、耳、手、眼、心。
童歌になぞらえて奪われていく五つの骸。
そして、犯人はなぜか法医学者・九条雅紀に疑いが向くよう、死体と証拠を配置していく。
十七年前、哭島で本当は何が起きたのか。
五人失踪事件の陰に消された、もう一人の名前とは。
死者を悼むための歌は、いつしか罪を暴くための呪いになった。
これは、死者の名を取り戻すために始まった、あまりにも歪んだ見立て殺人である。
――
■登場人物表
真壁彰
警視庁捜査一課の刑事。
二階堂壮也
警視庁総務部広報課の警察官。
九条雅紀
大学法医学教室所属の法医学者。
■哭島関係者・事件関係者
白井透子
哭島資料館の学芸員。
汐崎千広
哭島再生プロジェクトの責任者。
久我山峻介
哭島保存会会長。
牧野奏子
元新聞記者。
深町静真
元医師。
宗像恵
失踪者遺族の女性。
八尋美緒
哭島駅の管理スタッフ。
常盤怜
哭島の灯台管理人。
由良一華
失踪者遺族の若い女性。
麻生郁馬
映像作家。