あらすじ
衝動的に罵声を吐き続けてしまう青年・鈴井は、人を避けるように夜の街を彷徨っていた。向かう先は、田んぼ道の外れにある古びた自動販売機。そこで彼は、裸足のまま夜を歩く、不思議な聾の少女と出会う。
言葉をうまく交わせない二人は、手のひらに文字を書くことで、少しずつ互いの孤独に触れていく。母との確執、自分自身への諦め、他人への恐怖――静かな夏夜のなかで、欠けた者同士の交流が、鈴井の心にわずかな変化をもたらしていく。
これは、うまく生きられない人間たちが、夜の片隅でほんの少しだけ世界を許す物語。