あらすじ

静かな夜だった。 愛を語る声ほど、 中身のないものはないと、 妙は昔から知っていた。 「運命だった」 「魂が惹かれ合った」 「真実の愛なんだ」 そのたびに、 誰かの通帳が空になり、 誰かの人生が削られていく。 愛は自由だと叫びながら、 彼らはいつも、 他人の金で夢を見る。 妙は怒鳴らなかった。 泣きもしなかった。 ただ静かに、数字を見た。 消えた金。 改ざんされた帳簿。 膨らみ続ける交際費。 嘘で塗り固められた決算書。 人は嘘をつく。 愛にも、夢にも、涙にも。 けれど数字は、 沈黙したまま裏切らない。 だから妙は知っている。 優しさより正確なものを。 情熱より残酷なものを。 “真実”より信用できるものを。 貸借対照表は、 今日も完璧だった。 愛だけが、 最後まで赤字だった。

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小説を読もう2026/05/28
  • 現在の作品『真実の愛(笑)』 ―数字は嘘をつかない―