あらすじ
元和五年。仇討ちを終えた鷹森蓮は十七歳になり、光雲寺を発った。
老僧・了然の言葉を胸に——「刀がなくても生きていける場所を見つけな
さい」。
葬月丸は布に巻いて背負った。帯刀はしない。
中仙道を東へ歩いた蓮が流れ着いたのは、美濃・赤坂宿の蕎麦屋「杉田
屋」だった。
腰を痛めた主人・仁兵衛の俵を担ぎ、娘・凪の蕎麦を一口食べて目を見
開いた。
水を汲み、薪を割り、蕎麦を打つ。葬月の目は粉と水の関係さえ読んだ
。
裏方の少年は、宿場の噂になった。「杉田屋の若い衆は腕が立つらしい
」——それが最悪の展開の始まりだった。
宿場の裏を仕切る元締め・政五郎が蓮の素性に気づき始め、
三淵大納言の甥・信房の間者が中仙道へ向かった。
右腕を封じられた夜、蓮は左手で葬月丸を抜いた。
「その握りを見た者は、一人も生き残っていない」——だが蓮は、凪を殺
さなかった。
初めて本名を名乗った相手に、初めて刃を収めた。
最強の剣は、抜かない剣。見えない剣こそが至極——不見之剣。
◆葬月流(そうげつりゅう)◆
一子相伝の暗殺剣。傷の致死を一日〜七日で制御する「冥途の七送り」
を持ち、斬られた者はしばらく普通に動けるため犯人を特定できない。
その握りを見た者は一人も生き残っていない——二ノ篇が始まるまでは。
◆一ノ篇「逢月」未読の方へ◆
七歳で家族を喪い、刃だけを抱えて育った少年が仇討ちを果たすまでを
描いた一ノ篇は、まとめ●●●からお読みいただけます。