あらすじ
コンスタンツェ・フォン・ルーデンドルフは、王太子の婚約者でありながら「悪女」として断罪された公爵令嬢だった。
差し出されたのは、名誉ある自裁のための毒杯。
けれど、彼女は怖くて飲めなかった。
気絶し、目覚め、宝石箱を抱えて逃げ出し、豚小屋で泥まみれになり、最後はその先の堀に落ちて溺れ死ぬ。
そして気がつくと、断罪の三年前に戻っていた。
二度目の人生でコンスタンツェが始めたのは、改心ではなく命乞いの準備。
使用人に優しくするのは、逃亡時に見捨てられたくないから。
貧しい者へ施すのは、暴動で石を投げられたくないから。
王太子に庇護される少女リーネを助けるのは、彼女が泣くと自分が悪女にされそうだから。
善人になったわけではない。
ただ、二度と毒杯も、豚小屋も、堀も経験したくないだけ。
けれど、生き延びるために動くうち、コンスタンツェは気づいてしまう。
一度目の断罪は、ただの自業自得ではなかった。
毒婦と呼ばれた薬草令嬢エリーザベト。
男を破滅させる未亡人と噂されるヴィルヘルミーネ。
王太子に守られることで檻に入れられていたリーネ。
そして、手続きの粗さを見逃さない皮肉屋の文官オスカー。
悪女と呼ばれた女たちと、彼女の臆病さを笑わない男を巻き込みながら、コンスタンツェの命乞い帳は、いつしか宮廷の陰謀を暴く記録になっていく。
毒杯は飲まない。
宝石箱も抱えない。
豚小屋にも、二度と負けない。
これは、臆病で、強欲で、見栄っ張りで、決して善人ではない悪役令嬢が、二度目の人生で毒杯を拒み、自分の生きる場所を選ぶまでの物語。