あらすじ
主人公は、病気で母を亡くした一人暮らしの男性。
母は生前、料理が得意で花を愛し、何歳になっても息子を心配して頻繁に電話をかけてくる人だった。
「ちゃんとご飯食べてる?」
「無理してない?」
そんな何気ない電話を、主人公は少し煩わしく感じながらも当たり前の日常として受け止めていた。
しかし母が亡くなった日から、その電話は二度と鳴らなくなる。
残されたスマートフォンには、母からの最後の着信記録だけが残っていた。
母を失った悲しみから抜け出せない主人公は、実家の片付けをする中で母が残した手紙や箱を見つける。
そこには、
心配ばかりしていた理由
母親としての本音
息子への感謝
「何があってもあなたの味方」という想い
が綴られていた。
さらに母のスマートフォンの中から、亡くなる三日前に録音された音声メッセージが見つかる。
その中で母は、
「幸せになってください」
「ちゃんと笑ってください」
「花を見たら、お母さんを思い出して」
と語りかける。
主人公は初めて、母の愛情の大きさと深さを知る。
そして春。
満開の桜の下で、ずっと消せなかった母からの最後の着信履歴を削除する。
それは忘れるためではない。
もう履歴に頼らなくても、母が自分の心の中で生き続けていると気づいたからだった。
桜吹雪の中、主人公は母の声を思い出しながら静かに前を向いて歩き始める。