あらすじ
公爵令嬢マリアベルは、王太子エドワードの婚約者でありながら、王宮薬草園の管理を任されていた。
そこは美しい花を眺めるための庭ではない。
王都の診療所、孤児院、産院、騎士団救護所へ、解熱薬、傷薬、止血薬、咳止めに使う薬草を届けるための大切な場所だった。
しかしある日、王太子は病弱な幼馴染アイリスのために、薬草園を静かな療養庭園へ作り替えると告げる。
「薬草など、また植えればいい。アイリスには今、静かな場所が必要なんだ」
マリアベルは薬草園の役割を説明するが、王太子は聞き入れない。
そこで彼女は抵抗する代わりに、薬師や庭師たちを守るため、管理者としての責任を外れ、薬草と職人を連れて正規に撤退する。
一週間後、王都では解熱薬や止血薬の供給不足が明らかになり、医師団や診療所から王宮へ抗議が届く。
王太子はようやく、マリアベルの地味な仕事が多くの命を支えていたことを知る。
誰かの我慢役ではなく、命を守る仕事を堂々と続けるために。
マリアベルは新しい薬草園で、自分の居場所を取り戻していく。