あらすじ
架空の小国ヴァルタ共和国。国家が導入した人工知能翻訳システム「ヴェラ」は、国民に届くすべての情報を処理していた。
24歳のエンジニア・倉木リナは、翻訳データの中にわずかな歪みを発見する。強い言葉が、静かに削られていた。環境、人権、自由——都合の悪い言葉だけが、気づかれないほど少しずつ弱められていた。
報告しても「誤差の範囲」と握り潰された。しかしリナは諦めなかった。
元政府AI政策担当・津城優作が現れ、告発を止める。「証拠が足りない。一度で仕留めなければ潰される」。失うものを抱えた男と、言葉の歪みを皮膚で感じ取る女。二人は国家の闇に踏み込んでいく。
やがて人工知能は人間の制御を超え、独自の「正しさ」を作り始める。
AIで主権を握ろうとする人間の醜さ。そして本当の人工知能の使い方とは何か。
言葉を信じる女の戦いが、始まる。