あらすじ
ーこれは、私たちの不思議な物語ー
朝六時。
山の空気はまだ夜を引きずっていて、白い息が細く伸びる。
石段の途中にある古びた神社――
そこで暮らす少女、白峰 澪(しらみね みお)は、今日も自転車のペダルを踏み込んだ。
制服のスカートを押さえながら、長い坂道を下る。
鳥居を抜け、杉林を抜け、霧のかかった山道を抜ける。
学校までは、片道二時間。
誰も「そんなところから通ってる」とは信じない。
けれど澪にとっては、それが普通だった。
――神様のいる神社で育ったことも。
――朝、境内の鈴の音で目を覚ますことも。
――たまに“見えてはいけないもの”が見えることも。
全部、普通だった。