あらすじ
梅雨明け間近の夜。
植村 貢は、愛人の佐田 香を自殺に見せかけて殺害した。現場を後にする直前、部屋に吊るされた風鈴がチリリンと鳴る。貢はそれを気にも留めず、「上手くいったな」とほくそ笑んだ。
直後のお盆休み。
貢は妻・由利子とともに愛媛県松山市へ旅行に出かける。坊ちゃん電車に揺られ、松山城を訪れ、石手寺を巡る――平穏なはずの旅だった。
だが、行く先々で貢は死んだはずの香に似た女を見かける。
誰にも聞こえない風鈴の音や、耳元で囁く香の声までもが貢を追い詰めていく。
「気のせいだ」
そう言い聞かせる貢だったが、心の奥に沈めた罪は少しずつ彼を蝕んでいく。
やがて宿泊先の道後温泉で、貢はついに香と再会する。
「ねぇ、貢さん……なぜなの?」
恐怖に駆られた貢は、自ら封じ込めていた真実を叫ぶ。
それは、完全犯罪のはずだった殺人の告白だった――。
死者の復讐か。
それとも罪悪感が生んだ幻か。
松山の夏を舞台に描く、風鈴の音が呼び覚ます心理ホラー。
ラスト一行、あなたも「あの音」を耳にする――。
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