あらすじ
僕の父親は、地方銀行の融資部門の幹部。
対して、詩織(しおり)の父親は――この街を裏で牛耳る、反社会的勢力の幹部だった。
「表の人間が、裏の人間と関わるな」
お互いのことが大好きなまま、付き合って一年。
喧嘩らしい喧嘩もせず、ただ純粋に想い合ってきた高校生の僕たちに突きつけられたのは、大人たちの汚い世界の論理による「強制的な決別」だった。
燃えるような茜色に染まる、夕暮れ時の高台の公園。
これが最後のデートだと分かっているからこそ、他愛のない思い出話さえも、僕たちの心をナイフのように抉っていく。
「逃げよう」と縋り付く僕の醜い執着。
「現実を見てよ」と涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして叫ぶ、彼女の悲鳴。
理不尽な運命への怒りと絶望をぶつけ合う、泥だらけの抱擁の果てに、詩織は僕に一つの約束を求める。
「これから先、私以外の誰かを、絶対に私以上に大好きになって、幸せになって」
相手を想うからこそ、お互いの前では一滴の涙も見せず、最高の「笑顔」で別れた二人。
――だが、相手の視界から外れた瞬間、張り詰めていた糸は無残に切れて……。
息遣いや涙の音まで事細かに描かれた、理不尽な運命に抗い、そして引き裂かれた二人の、魂を揺さぶる至高の失恋物語。