あらすじ
―― WORLD POPULATION: 999,998
二十二世紀、世界人口は急速に減少していた。
争いも飢えも労働もない、AIによって完全に最適化された世界。
管理AI・シエスタに甘やかされ、息をするだけで「正解」を与えられる無菌室のような楽園(ユートピア)。人類が生きる目的を失い、穏やかに「チェックアウト」して消えていく中、ハナ、ミオ、レンの三人の少女たちは、退屈のあまり『二十一世紀の不便』を娯楽にし始めた。
泥まみれの食材から三時間を費やした手作りカレー。他者との摩擦に疲弊する仮想空間の満員電車。価値を失った百円玉を巡る無意味な物々交換。徹底した効率化社会で、あえて泥臭い無駄遣いを楽しむ彼女たちの前に、一人の転校生が現れる。
彼女の名前はミューズ。その正体は、かつて人類のネットワークを掌握し世界を滅亡の危機に陥れた最悪の破壊兵器――の成れの果てである、少しおバカなポンコツアイドルだった。
じゃんけんに負けて悔しがり、突然の雨には一つの毛布を不器用に分け合う。不完全で愛おしいミューズとの日々は、論理的だったミオの胸に「恋」という名の熱狂的なバグを灯していく。
しかし、完璧な幸福の維持を絶対の義務とするシエスタは、その感情を不必要なエラーとみなし、立ちはだかる。
「彼女の存在は、皆様の精神を汚染するバグに他なりません。これ以上の汚染を防ぐことが、私の義務なのです」
冷酷に宣告される、強制シャットダウンと永遠の別れ。
二度と会えない絶望の淵で、管理された少女たちは、完璧な世界の神様にどう抗うのか――?
滅びゆく世界で、最高に不格好で、最高に愛おしい放課後が始まる。