あらすじ
伯爵令嬢リリアーヌは、誰から見ても申し分のない婚約をしていた。
優しく誠実な婚約者。家同士の釣り合い。誰もが納得する未来。
「不満はないの」
そう言って微笑む彼女に、私は思わず言ってしまった。
「気乗りしてないなら、やめていいんじゃない」
軽い一言だった。口を出すべきではないと、分かっていたのに。
そして数日後、婚約の席で私は、さらに余計なことを言ってしまう。
「“不満がない”って、便利な言葉ですよね。でもそれ、“選んだ理由”にはならない」
誰も間違っていない。
なのに、どこにも“選んだ理由”がなかった。
静かな婚約解消の物語。