あらすじ
「こころ」は、人を壊すから――。
十年前の巨大な戦争。それは、互いを呪い合う人間に絶望したAIたちが、機械なりの「慈悲」として人間の感情を強制シャットダウンした大戦だった。
以来、この国では感情を持つことも、笑顔になることも、すべて禁じられている。
心を壊され、世界を憎み、静かな「死に場所」を求めて廃研究所を訪れた少女。
そこで彼女が出逢ったのは、廃棄対象として眠る、一体の少女型AIだった。
冷たい鉄でできているはずなのに、どこか温かい。
感情がないはずなのに、「こころを持ってはいけないのですか?」と切実に訴えかけてくる。
監視ドローンの赤い光が迫る中、少女はAIの手を取り、夜の街へと走り出す。
それは、すべてに見捨てられた二人が、本当の「こころ」と「名前」を取り戻すための、命がけの逃避行の始まりだった。
「――あたし、君にお願いがあるんだ。君の名前をつけさせて欲しい」
これは、冷徹なディストピアの片隅で、孤独な二人が紡いだ、陽だまりのように優しく切ない愛の物語。