あらすじ

侯爵夫人セレーネは、熱を出しやすい幼い娘ミーナのため、何年も薬草の調合記録を書き続けてきた。 けれど夫ギルベルトは、病弱な幼馴染リリアばかりを優先し、ついには娘の療養室まで明け渡すよう命じる。 「リリアの命がかかっているんだ。君なら分かってくれるだろう」 そう言って夫が暖炉へ投げ込んだのは、セレーネが娘の命を守るために書き続けた薬帳だった。 セレーネは泣かなかった。 燃え残った頁を拾い、娘を抱いて、静かに屋敷を出る。 夫は知らなかった。 その薬帳こそが、王都の子どもたちを救ってきた解熱薬の原本であり、侯爵家ではなくセレーネ個人の名義で王宮薬務局と契約されていたことを。 セレーネが去った翌月、王都に解熱薬は届かなくなる。 そして夫はようやく知る。 自分が捨てたのは古い帳面ではなく、妻が守り続けてきた命の記録だったのだと。

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小説を読もう2026/05/27
  • 現在の作品娘の薬帳を捨てた夫へ。あなたが愛した“病弱な幼馴染”には、もう私の薬は届きません