あらすじ

「帰る場所」 冷たい廊下に 小さな足音だけが響いていた夜 「おやすみ」と言ってくれる人の声を 何度も胸の中で探していた 窓の外の灯りを見ながら いつか自分にも 帰れる場所ができるのだろうかと 幼いふたりは空を見上げていた --- 大人になっても 傷は消えなかった 夜勤明けの眠気 足りないお金 泣き止まない赤ん坊 積み重なる洗濯物 それでも 六畳一間の小さな部屋には 確かに“ぬくもり”が増えていった 「おかえり」 たったその一言が こんなにも心を救うと ふたりは初めて知った --- 介護の仕事は 誰かの人生に触れる仕事だった 弱さに寄り添い 痛みに耳を澄まし 寂しさを見逃さない仕事だった だからふたりは知っていた 人は 立派な家ではなく 「大丈夫だよ」 と言ってくれる誰かによって 生きていけるのだと --- 子どもたちの笑い声が 狭い家いっぱいに広がる 散らかった玄関 名前の書かれたコップ 眠る前の「ぎゅっ」とする時間 そのひとつひとつが かつて欲しかった宝物だった --- 血のつながりだけが 家族じゃない 涙を拭ってくれた人 信じてくれた人 待っていてくれた人 その全部が “ふるさと”になる --- 季節は巡り 紫陽花の咲く庭で ふたりは並んで空を見上げる 泣いていた子どもたちは いつの間にか大きくなり 「ただいま!」 という声が 今日も家中に響いている --- 帰る場所がなかったふたりは 長い長い階段をのぼって ようやく見つけたのだ 誰かの心をあたためる 小さな灯りを そして今日もまた その灯りの下で 四つ葉のクローバーが 静かに揺れている

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小説を読もう2026/05/27
  • 現在の作品『ひだまりの階段 〜ふたりで織りなす四つ葉のクローバー〜』