あらすじ
『ゲシュタルトな僕と、フラクタルな君』
朝の通勤途中、
湊は何もない場所でつまずく。
段差もない。
小石もない。
けれど確かに、
“何か”に引っかかった感触だけが残っていた。
その日、
彼は八年ぶりに幼馴染の綾瀬凪と再会する。
中学時代まで、
当たり前のように隣にいた少女。
けれど高校進学前、
彼女は突然関西へ転居し、
連絡先も交換しないまま姿を消した。
社会人になった今、
偶然同じ通勤電車で再会した凪は、
昔とほとんど変わっていなかった。
変わらなすぎるほどに。
凪と再び時間を過ごす中で、
湊は少しずつ世界の“ズレ”に気づき始める。
青信号が長い。
街のタイミングが噛み合わない。
昨日まであったはずのものを、
誰も覚えていない。
そして凪だけが、
その違和感に最初から気づいていた。
日本政府は、
国家プロジェクトとして
人工知能とIPS細胞を融合させた
次世代人類開発を進めていた。
脳とAIを直接接続し、
人間の身体機能と認識能力を拡張する計画。
寿命は百八十年。
病気は制御され、
肉体は修復され、
思考は補助される。
それは、
人類の“進化”と呼ばれていた。
だがその技術は、
人間の認識そのものを書き換え始めていた。
世界を“全体”として捉える湊。
世界を“部分”として認識する凪。
真逆の認識を持つ二人は、
再び出会い、
少しずつ世界の真実へ近づいていく。
これは、
静かに壊れていく世界で、
たった一人を認識し続ける物語。