あらすじ

名はリナ。 城壁都市の南端、豊かな森を中心に暮らす平民街で育った平民だ。 けれど、彼女には誰にも言えない秘密があった。 ——魔力を持っている。 この国で魔力は、貴族だけに許された力だった。 平民に魔力があると知られれば、気味悪がられるか、最悪“回収”される。 だから祖父は、いつも小声で言った。 「絶対に、人前で使うな」 祖父のエドガーは、一人暮らしをしていた。 祖父はおそらく元貴族である。 理由は語らない。 ただ、若い頃に家を追われ、名を捨ててこの街に流れ着いたらしい。 夜になると、祖父は戸を閉め、蝋燭の灯りの中でだけ“勉強”を教えてくれた。 文字。 歴史。 貴族の礼儀。 そして——魔力。 「魔力は感情に呑まれる。怖がるな。流れを掴め」 祖父はそう言って、小さな灯火を空中に浮かべて見せた。 リナはそれを夢みたいだと思った。 けれど、彼女自身は不器用だった。 魔力を練ろうとしても熱が暴れ、すぐ倒れる。 「わたしには無理だよ」 「無理じゃない。お前は“器”が大きすぎるだけだ」 その意味を、リナは理解していなかった。

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小説を読もう2026/05/26
  • 現在の作品森の薬師と、王女の帰る場所