あらすじ
八月二十一日未明。
父、長女、長男が死亡し、母だけが生き残った佐藤家事件。
世間はそれを、精神を病んだ母親による一家殺傷事件と呼んだ。
しかし、母の日記と長女の自由帳には、奇妙な違和感が残されていた。
長男・和馬は、本当に事件当日まで生きていたのか。
献身的な父は、なぜ母にすべてを見せなかったのか。
感情の薄い長女・遥は、何を見ていたのか。
庭に咲いた朝顔。
使われない茶碗。
裏返された写真。
階段に残る小さな傷。
家族の中で誰かが消えた時、残された人たちはどこまで普通の食卓を続けられるのか。
これは、“壊れた母親”と呼ばれた女が、家族の中に埋められた真実を見つめ直す物語。