あらすじ
弟を見送った夜から半年。瀬戸内連絡汽船の航路整理課で働く久坂透は、乾いていたはずの乗船券が再び濡れていることに気づく。
行き先欄のないその切符に導かれ、透はふたたび夜の海にだけ現れる船、潮待ち航路へ乗り込む。船にいたのは、竹ぼうきを抱えた少女ミオと、何かを隠したままの船長。そして、伏せられた白い写真立てだった。
宇野の売店跡、直島の民宿、小豆島の名簿、呉の航海記録、三津浜に残された未練。死者たちの忘れものを拾うたび、ミオ自身の失われた名前が、少しずつ海から浮かび上がっていく。
これは、見送った者と、見送られなかった者のための、二度目の航路。