あらすじ
京都の静寂に佇む名家、犬神家。
そこは、伝統という名の「汚物」が滴る場所だった。
十七歳の犬神江戸(えど)は知っていた。
尊敬される祖父・宗一郎が、妹の朱里(あかり)を「作品」として蹂躙していることを。
父・賢治がその歪んだ欲望を継承し、母・静塚が洗剤の匂いでその罪を拭い去ろうとしていることを。
そして叔父・龍が、その地獄をレンズ越しに悦楽として記録していることを。
「この家は、汚れすぎている」
ある蒸し暑い夏の夜、江戸は決意する。
一族の血を、一滴残らず「洗浄」することを。
それは、愛という名の虐殺であり、救済という名の解剖。
しかし、最後の一人を「清浄」にした時、江戸は知る由もなかった。
自分自身の体内に流れる血こそが、最も拭い去ることのできない「最大の汚れ」であったことを――。
読後、あなたは言いようのない吐き気と、美しき絶望に飲み込まれる。