あらすじ
人間が滅びたあと、世界は「ケモノ」と呼ばれる存在たちの楽園へと姿を変えていた。
かつて穏やかだったその世界は、ある日を境に変質する。ケモノに擬態し、同族を捕食する異形——「バケモノ」の出現。
それにより楽園は崩れ、信頼は疑念へ、日常は生存競争へと変わっていった。
そんな世界で、幼いカイコのケモノ「しい」は家族を失い、ひとり取り残される。
弱く、何も知らず、ただ恐怖の中で息を潜めるだけの存在だった。そこへ現れたのはクリオネのケモノに擬態したバケモノの「るの」。るのはしいを保護し、「一緒にいよう」と告げる。
それは救いにも、檻にも見える言葉だった。るのは優しく、軽やかで、しぃを決して手放さない。
だがその瞳の奥には、“いつか食べる”という捕食者としての本能が静かに眠っていた。
しいは恐怖と安心の間で揺れながら、るのに縋ることしかできない。
そしてるのもまた、ただの気まぐれなのか、それとも本当に執着なのか分からないまま、しぃを「大切に」し続ける。
これは、
守る者と守られる者の物語ではない。
捕食者と被捕食者が、
“ゆりかご”の中で関係を続けてしまう話。