あらすじ
「全部やってくれる女がいたら結婚するわ」
三十二歳、独身、面倒くさがり。金曜の飲み会で、半分本気の冗談を口にした。すると経理部の三崎柚月が、静かに言った。
「わたし、そういう男性が欲しいと思ってました」
その夜、俺は彼女のマンションに行った。風呂が沸いていた。下着のサイズが合っていた。翌朝の味噌汁は、五年会っていない母の味と同じだった。教えたことは、なかった。
全部、彼女がしてくれる。料理も、洗濯も、服を選ぶことも、風呂で体を洗うことも。額に毎晩キスをして、電気を消してくれる。
楽だった。考えなくていい生活は、楽だった。
楽すぎて、怖かった。