あらすじ

「私の父は、あの怪獣を殺した英雄だった」 二〇〇九年八月十七日午前四時三十七分。 東京湾に出現した史上初の怪獣、通称「ヨコハマ第一号」。 七十二時間に及ぶ自衛隊との交戦の末、討伐される。 死者四千二百三十七人、行方不明千八百九十二人。 「平成最大の災害」として記憶される、その事案から十七年。 週刊真相の記者・小野寺直、三十五歳。 前年の誤報で社内立場を失った彼は、起死回生の「十七周年特集」を任される。 取材を始めた小野寺は、奇妙なことに気づく。 遺族の証言が、食い違っている。 怪獣の色も、鳴き声も、誰一人として同じことを言わない。 認知症が進む父──最終攻撃を指揮した「ヨコハマの英雄」──は、テレビに映る当時の映像を見て、ぽつりと呟く。 「あいつは、横浜を見ていなかった」 「空を見ていた」 やがて慰霊祭で出会った一人の女子大生・西野ひかりは、四歳のときに被災した自分の記憶を、十七年ぶりに誰かに語る。 「あの怪獣がいなかったら、東京は、火の海になっていました」 史上初の怪獣災害は、本当に災害だったのか。 父が殺したのは、いったい何だったのか。 十七年間、誰もが正しく覚えていなかった、あの夏のこと。

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カクヨム
カクヨム2026/05/26
  • 現在の作品怪獣は泣いていた ――史上初の怪獣災害は、本当に災害だったのか