あらすじ
古書店で働く雨宮栞が見つけたのは、「誰も読まない」と記された十年前の日記帳だった。そこには、ある青年の孤独な日常と——セーラー服を着た少女への、切ない恋心が綴られていた。いつもの席で本を読む彼女。「星の王子さま」を何度も買う彼女。目が合った、ただそれだけで胸が痛くなる彼女。読み進めるうちに、栞は気づいてしまう。日記に書かれた「彼女」は、かつての自分だと。十年前、家庭の事情で突然この街を去った栞は、その想いを知らないまま消えてしまった。届くはずのなかった恋文。届けることを諦めていた想い。あの日、言葉を交わすことすらできなかった二人に、今、十年越しの再会が訪れる。「誰にも読まない」と綴られた日記を読んでしまった私は、今度こそ届ける側になると決めた——。片想いの残響が紡ぐ、不器用な大人たちの再出発の物語。