あらすじ

仲間を逃がすため、カインは一人で殿《しんがり》に残った。 崩れかけた渓谷。 押し寄せる鬼人の群れ。 血だらけになりながらも笑って戦い続けた彼の姿を、仲間たちは今でも忘れられない。 聖女イリスは、その話になると泣きそうな顔をする。 女騎士セレナは「もう二度とお前だけに背負わせない」と剣を握る。 斥候のリタは、カインが戦場で笑うだけで青ざめる。 彼女たちにとって、カインは自分の命を投げ出して仲間を救った英雄だった。 だが、本人だけが知っている。 あれは献身でも勇気でもない。 恐怖をごまかすための笑顔でもない。 カインは、人を斬ることに性的な興奮を覚える体をしていた。 殺す気で向かってきた敵の首に刃を入れ、その命が自分の手で途切れる瞬間。 それが、どうしようもなく気持ちいい。 血だらけで笑っていたのは、仲間を安心させるためじゃない。 あまりにも昂って、顔を戻せなかっただけだ。 しかし、そんな最低の本音を言えるわけがない。 言えば聖女は泣く。 女騎士には軽蔑される。 斥候には一生ネタにされる。 そして童貞のまま人生が終わる。 だからカインは黙っている。 自己犠牲の英雄という、身に覚えのない評価を背負ったまま。 これは、殺しの快楽を絶対に隠したい童貞剣士と、彼を英雄だと信じて曇っていく仲間たちの、最低で重い勘違いファンタジー。

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カクヨム
カクヨム2026/05/26
  • 現在の作品仲間を逃がして(しんがり)に残った俺、英雄扱いされてるけど本当は殺しが気持ちよかっただけ 〜血だらけで笑っていた理由だけは、絶対に言えない〜