あらすじ
大国(おおくに)葦原(あしはら)――その国には太古、神々の怒りが降った。地上に下されたそれは人々に忌(いみ)ノ(の)水(みず)海(うみ)と称され、恐れられる毒の水海。その水は骨肉を溶かし、また大地を腐す毒気を放ち地上のものを苦しめる。
十数年前の政変の生き残り、前王朝の嫡子であった相模嶺(さがみね)は母親とほかの生き延びた者たちと共に落人の村で暮らしていた。その名を東彦(あずまひこ)と改めて民の一人として過ごす東彦はときおり荷物を運ぶ集団を襲うことで村の生活を支えていたが、その日の荷物の中に入っていたのはどこか幼げな容姿をした一人の青年だった。
阿胡(あこ)と名乗る青年の正体は忌ノ水海を浄化する「祈木(いのりぎ)」。東彦は中央の追手から阿胡を守ることになる。
逃亡を手伝ううちに東彦は阿胡と心通わせる――だが、それゆえに二人の思いは擦れ違う。
彼らは自分の運命にどう向き合うのか……。