あらすじ
勇者パーティーの料理番カイトは、魔王領突入を前に追放された。
理由は、戦えないから。
魔法も使えないから。
そして、スキルが「味が分かるだけ」の外れスキル《味覚補正》だったから。
けれど勇者たちは知らなかった。
カイトの一皿が、疲労を抜き、体調を整え、明日も戦える体を作っていたことを。
そして、カイトの《味覚補正》がただ味を見るだけのスキルではないことを。
カイトには、人に足りないものが“味”として分かる。
空腹。
冷え。
疲労。
孤独。
不安。
その人の体と心に何が足りないのか。
どんな一皿が必要なのか。
カイトには、それが舌で分かる。
追放された夜、カイトは森で、味に嘘をつけない獣人少女ルルと出会う。
まずいものは、まずい。
おいしいものは、おいしい。
そんな正直すぎる舌のせいで村から浮いていたルルは、カイトの作った黒パン粥を食べて涙をこぼす。
「まずくないのに、目が痛い」
その一言から、カイトの辺境食堂は始まった。
壊れたかまど。
足りない食材。
まずい保存食しか知らない村人たち。
それでもカイトは鍋を火にかける。
粗末な食材でも、人は救える。
一皿あれば、空腹も、冷えも、孤独も、少しだけ満たせる。
これは、追放された料理番が外れスキル《味覚補正》で辺境の食卓を変え、やがて王族まで通う店を作る物語。